主文

1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1被告が,原告に対し,平成12年9月27日付けでした,次の法人税の各更正処分のうち,以下の部分をいずれも取り消す。
(1)平成8年10月1日から平成9年9月30日までの事業年度については,翌期へ繰り越す欠損金額が2517万2338円を超えない部分
(2) 平成9年10月1日から平成10年9月30日までの事業年度については,翌期へ繰り越す欠損金額が1704万5478円を超えない部分(3) 平成10年10月1日から平成11年9月30日までの事業年度については,所得金額が239万9211円を超える部分
2被告が,原告に対し,平成12年9月27日付けでした,平成10年10月1日から平成11年9月30日までの事業年度の過少申告加算税賦課決定処分(高岡法第278号)を取り消す。

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第2事案の概要

本件は,原告が,被告に対し,平成12年9月27日付けでした,平成8年10月1日から平成9年9月30日まで,平成9年10月1日から平成10年9月30日まで及び平成10年10月1日から平成11年9月30日までの各事業年度(以下「本件事業年度」という。)における法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)のうち,損金算入を否認された部分及び平成10年10月1日から平成11年9月30日までの事業年度における過少申告加算税賦課決定(高岡法第278号,以下「本件賦課決定」という。)の取消しを求めた事案である。
1当事者間に争いのない事実
(1)原告は,平成8年10月1日から平成11年9月30日までの間,別紙2の信用保証料一覧表のとおり,富山県信用保証協会(以下「本件協会」という。)の保証を受けて金融機関から借入をし,本件協会に対して信用保証料を支払った。
(2)原告は,被告に対し,本件事業年度について,青色の確定申告書により,申告期限内に法人税の申告をした。
(3)被告は,別紙1の本件更正処分表のとおり,平成12年9月27日付けで,本件各更正処分を行い,同日付けで,本件賦課決定を行った。
(4)原告は,本件各更正処分及び本件賦課決定を不服として,国税不服審判所長に対し,審査請求を行ったが,同所長は,平成14年10月28日,審査請求を棄却する旨の裁決をした。
2本件の争点は,原告が本件協会に支払った信用保証料が,その支払った日の属する事業年度において一時に損金の額に算入すべき費用であるか,全保証期間を通じて損金の額に算入すべき費用であるかである。
(被告の主張)
(1)本件協会の行う信用保証制度は,本件協会が予め金融機関との間で締結した約定書に基づくものであり,同制度を利用する中小企業者が融資を依頼する金融機関を通じて本件協会に保証の申し込みを行い,本件協会が審査等をしたうえで,当該金融機関に信用保証書を発行することにより成立するものとされている。
信用保証料は,当該金融機関が融資を実行する際に,所定の計算に基づいて中小企業者から徴収して,本件協会に支払うものである。
利用者である中小企業者が支払う信用保証料は,基本的に,本件協会が保証する債務の額と保証期間に応じて算定され,保証金額の大小と保証期間の長短にそれぞれ比例している。
すなわち,信用保証料は,継続して信用保証という役務提供を行うことの対価であり,通常は融資が実行される際に,一括払いされる。
そのため,債務者が約定の最終返済日の前に返済を終了した場合には,短縮された保証期間に対応する信用保証料が過払いされたのと同様の状態になる。
そこで,本件協会は,そのような場合には,信用保証料の当該過払分を債務者に返戻することを明らかにしている。
(2)そうすると,原告が支払った信用保証料について,当該期に損金として算入される金額は,全体の保証期間から当該期に対応する期間で按分計算した部分に限られ,未経過期間に対応する金額は,前払費用(法人税法施行令14条2項)とすべきことになる。
例えば,A融資の信用保証料について,平成9年9月期に損金として算入される金額は,全体の保証期間である60か月から,当該期に対応した 11か月分に対応する金額(11分の60)に限られる。
したがって,本件事業年度において,否認される未経過信用保証料又は算入される経過信用保証料は,別紙2の信用保証料否認・算入表のとおりである。
(3)そうすると,翌期に繰り越されるべき欠損金額又は所得金額は,次のとおりとなる。これが,本件各更正処分の根拠である。
【平成9年9月期】(欠損金額)
 原告申告額2517万2338円(1)
否認額13万8486円(2)
更正処分額2503万3852円(12)
 【平成10年9月期】(欠損金額)
原告申告額1704万5478円(1)
前期否認額13万8486円(2)
今期差引否認額15万0266円(3)
更正処分額 1675万6726円(123)
【平成11年9月期】(所得金額)
原告修正申告額 239万9211円(1)
前々期否認額 13万8486円(2)
前期差引否認額 15万0266円(3)
今期差引否認額 100万6979円(4)
更正処分額 369万4942円(1+2+3+4)
(4)本件賦課決定の根拠は,次のとおりである。
ア国税通則法65条1項に基づく金額 3万2000円
平成11年9月期更正処分により,原告が納付すべき法人税額74万6500円と,原告の修正申告により納付すべき法人税額42万2800円との差額が32万3700円であるので,この金額(ただし,同法118条3項により1万円未満は切り捨て)に100分の10を乗じて算出した金額
イ同法65条2項に基づく金額 3500円
上記アの差額32万3700円と原告の修正申告によって納付すべき税額25万4500円との合計額57万8200円から50万円を差し引いた金額(ただし,同法118条3項により1万円未満は切り捨て)に100分の5を乗じて算出した金額
(原告の主張)
(1)本件協会の行う信用保証は,中小企業者の委託によって行われ,この委託契約は,民法上の委任契約に該当する。
信用保証料は,民法648条1項及び2項に基づくものであり,本件協会と債務者との間で信用保証委託契約書が作成され,本件協会が金融機関に信用保証書を発行し,金融機関が融資を実行したときに,その委任事務が終了し,保証料の請求権が確定する。
信用保証料は,信用保証書の発行に対する対価である。
(2)本件協会は,信用保証料について,次のように定めている。
ア信用保証料は,全額を一括徴収するのを原則とする。
ただし,特定の場合で,被保証人から分割の申出があったものについては,分割徴収することができる。
イ徴収した信用保証料は,原則として返戻しない。
ただし,最終返済日前に完済した場合及び保証条件変更により返戻保証料が生じた場合に限り,一定の計算により,被保証人に返戻する。
なお,次に該当する場合は,信用保証料は返戻されない。
A被保証人の返戻の対象となる保証以外の保証について,未収保証料又は延滞保証料がある場合
B被保証人の返戻の対象となる保証以外の保証について,延滞又は事故が発生している場合
C完済報告が著しく遅延した場合
(3)このような信用保証料の返戻の定め方によれば,信用保証料の返戻は,信用保証委託契約上の義務ではなく,本件協会の公益的性格によるものであって,被保証人が契約上の債権として請求できるものではない。
このことは,信用保証委託契約書2条2項に「信用保証料は,違算の場合を除き返戻を求めません。」と規定され,返戻額の計算についての記述もないことから明らかである。
信用保証料の返戻について記述されている「信用保証の実務解説」は,本件協会が金融機関向けに配布しているものであって,内部文書にすぎず,債務者に説明されるものではな い。
(4)したがって,信用保証料は,融資が実行されたときに返戻されないことが法的に確定するので,融資が実行されたときの一時の費用として損金算入すべきであり,将来実際に返戻されたときは,返戻された事業年度の益金に計上すべきである。
被告は,信用保証料が保証金額と保証期間に比例して計算されている旨主張するが,それは代位弁済の危険度の大きさを測定する方法として,最も合理的であるからであり,未経過信用保証料の存在とは無関係である。
(5)予備的主張
仮に,信用保証料が融資が実行されたときの一時の費用として損金算入できないとしても,信用保証料の返戻額は,約定に基づく返済予定額を基礎として比例面積計算により算定されることになっており,信用保証料を単純に保証期間の月数で除して,これに未経過月数を乗じて算定されるものではない。
これは,毎月の返済によって融資残高が減額し,危険度が逓減するからである。
そうすると,各融資について,毎月の残額を各期毎に累積計算し,その累積高の各期での占める割合を累積係数として算定し,その累積係数に応じて信用保証料を按分配分して,その限度での損金算入を認めるのが最も合理的である。
このような方法で損金算入を算定すると,別紙3の累積係数による配賦表のとおりとなる。
なお,同表の「保証契約1」はA融資の,「保証契約2」はB融資の,「保証契約3」はC融資の,「保証契約4」はD融資の各信用保証委託契約である。
したがって,少なくともこの限度では,本件各更正処分及び賦課決定は,取り消されるべきである。

第3争点に対する判断

1乙1号証及び調査嘱託の結果によれば,次の事実が認められる。
(1)本件協会は,信用保証協会法に基づいて設立された特殊法人である。
信用保証制度は,中小企業者が円滑に融資を受けられることを目的とした制度であるが,その概要は,次のとおりである。
この制度を利用したい中小企業者が金融機関等を経由して,本件協会に保証の申し込みを行い,本件協会において,内容を審査して,適当と認めた場合には保証を承諾し,金融機関に信用保証書を発行して保証契約を締結し,金融機関が中小企業者に融資を行う。
中小企業者である債務者は,本件協会との間で,信用保証委託契約を締結し,本件協会に対し,信用保証料を支払う。
(2)信用保証料は,基本的には,保証金額と保証期間に比例して,融資の種類によって定まる保証率を乗じて算定される。
信用保証料は,融資の際に,金融機関が一括徴収するのが原則であるが,一定の場合には分割徴収することも認められる。
信用保証料は,原則として返戻しないが,最終返済日前に完済された場合及び保証条件変更により返戻保証料が生じた場合に限り,返戻される。
返戻の計算方法は,次のとおりである。
ア返戻の対象期間は,保証期間を貸付日から1年毎に区分し,完済日の翌日以降の未経過期間とする。
イ返戻額は,完済日の属する1年については,未経過保証料の90%を,完済日の属する1年を超える期間については,全額とする。
ウ返戻額の計算は,約定に基づく返済予定額を基礎として,比例面積計算により行う。
エ 計算された返戻額が1000円未満の場合は,返戻しない。
(3)ただし,次に該当する場合は,信用保証料は返戻されない。
ア被保証人の返戻の対象となる保証以外の保証について,未収保証料又は延滞保証料がある場合
イ被保証人の返戻の対象となる保証以外の保証について,延滞又は事故が発生している場合
ウ完済報告が著しく遅延した場合
2上記認定事実に基づき検討する。
(1)本件協会の行う信用保証は,中小企業者の委託によって行われ,この信用保証委託契約は,民法上の委任契約に該当すると考えられる。
信用保証料は,上記契約に基づいて支払われるものであるが,基本的に,本件協会が保証する債務の額と保証する期間に応じて算定され,保証金額の大小と保証期間の長短にそれぞれ比例しており,かつ,最終返済日前に完済された場合及び保証条件が変更された場合に,信用保証料が返戻されることからみて,継続して信用保証という役務提供を行 うことの対価であると認められる。
したがって,信用保証料は,一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用といえる。
(2)これに対し,原告は,信用保証料について,信用保証書の発行に対する対価であり,金融機関が融資を実行したときに,その委任事務が終了する旨主張する。
しかし,本件協会が信用保証委託契約によって負う委任事務は,上記(1)のとおり,単に,金融機関に対する保証契約の締結のみならず,同契約で定められた保証期間中,継続して,委任者である中小企業者と金融機関に対する債務を保証するという役務を提供することを含むものであるから,信用保証料を,信用保証書の対価とみることはできない。
(3)また,原告は,信用保証料の返戻は,信用保証委託契約上の義務ではなく,信用保証料は,融資が実行されたときに返戻されないことが法的に確定する旨主張する。
しかし,信用保証料の返戻は,本件協会が定めているものであり,保証委託者である中小企業者と本件協会との間の信用保証委託契約の内容となるものであるから,信用保証料を返戻すべき事由が発生した場合には,本件協会において,信用保証料を返戻すべき義務が生じるものである。
保証委託者である中小企業者に対し,返戻の内容が十分説明されているかどうかは無関係である。
また,返戻請求権は,所定の事由が生じた場合に発生するものであるから,融資が実行された段階で発生するものではないが,そのことは,信用保証料が前払費用に該当することを否定するものではない。
なお,上記(1)のとおり,信用保証料を返戻すべき事由が生じた場合でも,信用保証料が返戻されない場合も定められているが,それらは,本件協会が債務者に対し
て反対債権を有している場合,有する可能性が高い場合又は信義則上の問題がある場合とみられるのであって,返戻請求権の権利性に影響を及ぼすものではない。
(4)そうすると,原告の主張は,いずれも採用できない。
したがって,原告が支払った信用保証料のうち,当該事業年度終了の時点においてまだ提供を受けていない役務に対応する部分は,損金として算入できないものである。
3原告の予備的主張について判断する。
(1)前記1認定事実によれば,信用保証料が返戻される場合に,返戻額の計算は,約定に基づく返済予定額を基礎として,比例面積計算により行うものであり,信用保証料を保証期間の月数で除して,これに未経過月数を乗じて算定されるものではない。
ところで,本件各更正処分は,信用保証料を保証期間の月数で除して,これに未経過月数を乗じて,その部分の損金算入を否認したものであり,原告の予備的主張は,信用保証料を融資残高の累積額の占める割合に応じて事業年度毎に按分計算し,未経過年度分について損金算入をしないという計算方法である。
(2)そうすると,原告の予備的主張の方法による計算方法は,本件各更正処分における計算方法よりも,信用保証料の返戻の計算方法により近いといえる。
しかしながら,法人の所得金額の計算上,当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものである(法人税法22条4項)から,合理的な計算方法によれば足りるものである。
本件各更正処分における計算方法は,信用保証料が保証期間中の役務提供を受けるために支出した費用であることに着目したもので,合理性のある方法であり,かつ,計算方法も簡便である。
また,原告の予備的主張の方法による計算と,本件各更正処分における計算の各結果は,大きく相違するものでもない。
したがって,原告の予備的主張の方法による計算と,本件各更正処分における計算方法は,いずれも十分な合理性を有するものといえるから,本件各更正処分における計算方法が違法であるとはいえない。
(3)よって,原告の予備的主張も理由がない。
4以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

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