また,品質管理課のI以外の同僚も,亡Aをきつい言葉で批判・非 難していた。
職場におけるいじめ・ハラスメントが働く人の人権を侵害し,精神 的に大きな打撃を与えるものであることが,近時,各国において認識 されてきており,そのためこれを防止する機運が高まっているが,我 が国においても,厚生労働省が,職場におけるセクシャルハラスメン トによる精神障害等が業務上災害と認められうることを明確にしたが, 職場におけるハラスメントはセクシャルハラスメントに限定されるも のではない。
d 長時間労働
亡Aは,品質管理責任者就任後,特に死亡前3か月(平成9年9月 ころ~11月)は,その業務の多忙さから,長時間労働を余儀なくさ れ,このことが亡Aに過重な肉体的・精神的負荷を与えた。
平成9年8月ころまでは,亡Aは,業務が多忙であったものの,夜 9時ころまでに帰宅できることが多かったが,同年9月に入ってから 忙しさが増し,会社での残業時間も長くなったため,帰宅時間が遅く なっていた。
特に,同月中旬以降の同年10月,11月は極めて多忙 な毎日であった。
大宮工場の始業時刻は午前8時30分であったが,平成9年9月か ら11月は,亡Aの出勤時刻がどんどん早くなり,会社で朝の時間外 労働を行っていた。
また,亡Aは,この時期,夕方の終業時刻以降も 恒常的に居残り残業をしていた。
Jと勉強会を行っていた期間につい ては,3時間から5時間,勉強会を行っていなかった期間についても, 少なくとも3時間は残業をしていた。
この点,被告はタイムカードや 勤務台帳の記載を基に,亡Aの早朝出勤や残業の主張,また,ほとん ど毎日行われていたJとの勉強会の主張は誤りである旨主張する。
し かしながら,タイムカードについていえば,亡Aは早めに退出時刻を 打刻してしまって残業をすることがままあったし,また,タイムカー ドを押して一旦外出し用事を済ませてから職場に戻って仕事をするこ とも時々あったので,タイムカード上の記録と実際の残業時間は必ず しも一致しない。
タイムカードを押してから勉強会や残業を行ってい たのは,亡Aが勉強会で残業代をもらおうとしていなかったこと及び 周囲に残業してまで仕事を消化していると思われるのはいやだと考え ていたことによる。
また,被告は,Jとの勉強会の行われていた期間 の出勤日34日のうち,勉強会を行わなかった日が少なくとも19日 ある旨主張するが,Jはほぼ毎日行っていたと一貫して述べているし, 被告の主張は,タイムカード上のJ及び亡Aの記録を恣意的に解釈し, 勉強会が行われた日をことさらに少なくしようとするもので不当であ る。
その上,亡Aの自宅での持ち帰り残業は,この時期,特に長時間に なっていた。
亡Aは,平日の夜も,また休日である土日にも,自宅で 主としてワープロを用いた時間外労働に従事していた。
亡Aは,平成 9年9月中旬以降死亡する直前まで,職場で居残り残業をして夜9時 ないし10時に帰宅した後,自宅に仕事を持ち帰り,少なくとも夜中 の12時過ぎまで家で残業をするようになった。
帰宅後,1時間ほど 仮眠をとってから,仕事に取りかかることもあったが,同年11月の 死亡直前期は仮眠も取れないほど多忙を極め,帰宅後すぐにワープロ に向かって深夜まで仕事を続けた。
亡Aは,同月中旬以降,深夜の2 時,3時過ぎになっても仕事を続けていた。
また,亡Aは,平日の帰 宅後だけでなく,休日にも,ワープロを使ってほとんど一日中自宅で 働いていた。
このことは,文書ファイルの更新日時の記録,亡Aの仕 事部屋に自宅労働の成果物である規格書のプリントアウトが大量にあ ったことによっても裏付けられている。
なお,亡Aが従事していた自宅労働の内容は,前述した規格書等に 関する作業が主であった。
亡Aは,かかる作業を,内部査察(自己点 検)の日である平成9年11月26日までに完成させなければならず, 日中は規格改訂以外の業務で多忙であったことから,自宅労働をして こなす必要性に迫られていた。
亡Aの時間外労働時間は,平成9年9月1日から同月30日につい ては合計204時間余り,同年10月1日から同月31日については 合計278時間余り,同年11月1日から同月25日については合計 192時間余りに及んでいる。
これは原告尋問の結果,J証言及びタ イムカードの記載等から最低限認められる時間を算定したものであり, 実際には,原告の就寝後も,亡Aが自宅で労働を続けていたことは間 違いがなく,現実の時間外労働は上記時間を超えている。
なお,上記 労働時間は,Jとの勉強会があった期間については,夜9時まで,そ れ以外の期間については夜7時まで亡Aが残業したものと推定して計 算した。
このように,亡Aは,死亡前約3か月にわたり,自宅への持ち帰り 残業を含む長時間労働に従事せざるを得ず,かかる長時間労働は,亡 Aに多大な肉体的・精神的負荷を与えた。

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